腕枕で眠らせて
沈黙が、落ちた。
静かになったリビングで、でもきっと、三人の気持ちが交錯してる。
目に見えない感情がきっと、静かな空気に煩く満ちている。
慣れて耳障りの良くなった雨音を遮るように、楷斗が言葉を始めた。
拗ねた子供のような表情に。
でも、まっすぐ私を見てくれながら。
「…別に、俺は今だって昔だって……お前を傷付けようとしてたワケじゃねえよ。
…確かに調子にのってたのは謝る。けど。
けど…俺は…
…俺なりに今も昔も美織のこと…!」
「楷斗さん」
切羽詰まった色の楷斗の声を、紗和己さんが止めた。
「それ以上は、彼氏である僕の前では遠慮して頂けませんか」
穏やかに微笑んでそう言った紗和己さんは、とてもいつものようで、けれど全然違っていて。
繋いだ手が私を求めるように強く握られた。
「………あー…、…悪い…」
口角をニコリと上げた紗和己さんに釣られる様に表情を弛めた楷斗は、バツが悪そうに頭を掻きながらも素直にそう言った。
そのぶっきらぼうな謝罪に、紗和己さんは今度は目元も細めて静かに微笑んだ。