腕枕で眠らせて
私の元カレは。
強引で。マイペースで。人の事全然考えなくて。非常識で。
でも。
「…ごめんな、美織」
ただ、一言。けれど。
今度こそペラペラじゃないその一言は、私にあの頃の大切な気持ちを思い出させた。
―――滅茶苦茶だったけど、まっすぐに私に想いをぶつけてくれた。楷斗のそんなところ、大好きだった。
刹那的でも、思い付きでも、私を喜ばそうと何度もしてくれた。すごく嬉しかった。
嘘じゃなく想い合えた事も。幸せだった事も。
やっと
思い出にしてあげられる。
「―っ…」
ツンと鼻の奥が痛くなって、涙が零れた。
いつのまにか手をほどいていた紗和己さんが、その指で涙を拭ってくれた。
ゆるり、微笑んでくれた顔はいつもの温かい紗和己さんで。
嬉しくて微笑み返したら、私の両目からもっとぽろぽろと雫が溢れた。