腕枕で眠らせて
「…楷斗…」
涙で声を詰まらせながら、戸惑って立ち尽くす楷斗に呼び掛けた。
「また、会おう。
今度は愛子と、楷斗と、私と、紗和己さんも一緒に」
私の言葉に、楷斗は少しだけ口をつぐんで。
それからゆっくりとまばたきをして。
そして困ったように笑いながら
「ん。分かった」
素直に頷いた。
「…私、間違ってなかったかな。紗和己さん」
貸した傘を差しながら帰っていく楷斗を、紗和己さんと一緒に玄関で見送りながらポツリと聞いた。
「美織さん自身が出した答えです。正しいも間違いも無いですよ」
静かな声で答えてくれた紗和己さんを振り向くと、彼は優しくてまっすぐな眼差しで私を見ていた。
「けど、今日の貴女はとても凛々しく僕の目に映りました。
強くなりましたね、美織さん」
それは、貴方がくれた強さだよ。
紗和己さん。
ぎゅうっと想いを籠めて抱きついた広い胸は、弱い私も強い私も受け止めてくれる温かい場所。
ありがとう。紗和己さん。