腕枕で眠らせて
仕事なのに、この人何言ってるんだろうって思われてるのかな。
被害妄想、自意識過剰。
ちょっと怪訝そうな表情を浮かべた玉城さんの視線が恐くて、無意識に一歩後ずさると
水嶋さんがもう一度私の肩を叩いて言った。
「ご一緒に電車で行きませんか?今日はいいお天気だし駅まで歩くのもきっと気持ちいいですよね」
おおよそビジネスとは思えない、まるで散歩の誘いのようなその提案に、私はもちろん玉城さんも目を丸くしている。
「あ、もちろん別で行って向こうで待ち合わせでも構いません」
そんな風に言いながら水嶋さんは身に付けていた黒猫のワンポイント入りのエプロンをさっさと外している。
まるで早く散歩に行こうとワクワクしながら逸らせるみたいに。
「…ふっ、ふふふっ」
思わず、私の口から笑いが零れた。