腕枕で眠らせて



別に彼女自身に異性に興味がある訳ではない。

彼女には上質のクリスタル硝子を上手に造る素敵な旦那さまがいるのだから。



「美織、チャンス!チャンス!引きこもりに出会い到来!」


失礼とおせっかい極まりない台詞だけど、彼女の口が悪いのは昔からで悪気が無いのは分かっているから気にしないでおく。


「あのねえ。私まだ水嶋さんが30前の男って情報しか言ってないんだけど、どうしてそうなるかな」

「既婚者なの?」

「分かんない。…でも指輪はしてなかったと思う」

「じゃあいいじゃん。今の美織は圧倒的に出合いが少ないんだからこのチャンス大事にしないと」


昔から恋愛至上主義だった佐知は人妻になった今でもその思想は変わらず、ただしこうして自分ではなく周囲へ押し付けて来るようになった。


もちろんそれだけでは無いけど。


「いい加減新しい恋しなって、美織。昔の恋の傷を癒すには新しい恋が一番だよ」


佐知なりに、私を心配してくれてるんだ。





< 37 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop