腕枕で眠らせて



直球で優しい助言をされると何も言えなくなってしまう。



佐知は私の二年前の失恋を知っている。


あの時はほぼ毎晩、会社の友人と佐知と、交互に電話で時には呑みながら慰めてもらったのだから。


だから、そんなボロボロに傷付いた私を知っているからこそのお節介なのだ。



「臆病になってるのは分かるけどさ、もう二年だよ。いつまでも引き摺って閉じ籠ってないで新しい幸せ見つけなくっちゃ」


恋愛が幸せの全てだとは限らない。現に今の私は黙々と美しい硝子のオブジェを造ることに一番幸せを感じている。


でも、そんな反論は恋愛至上主義の佐知には通用しないし、それに私の為を思って言ってくれてるのだから言い返すのは野暮ってものだ。





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