腕枕で眠らせて



「ありがと、佐知。まあ今後水嶋さんと仲良くなる事があったら考えてみるよ」


佐知の優しさを当たり障りのない言葉でやんわり濁す。


契約から納品までの手続きが済んだ今となっては、もう水嶋さんと直接会うこともそう無いだろうし仲も深まりようが無いだろうけどと思いながら。


それ以前にやっぱり私は恋愛する気ゼロなんだけど。



いい加減、長くなってしまったお喋りに終止符を打つべく、私はクリスタル硝子の入った箱を自分の車へ運び込んだ。


「いつもありがとうね。旦那さんにも宜しく」


そう言って運転席から挨拶した私に、佐知は車の窓枠に手を掛けて

「美織、本気でちょっとその社長の事考えてみなよ」

真剣に名残惜しそうにそう言った。


だから社長じゃないってのに。


眉尻を下げながら車を出発させたい気持ちを籠めて苦笑いすると、佐知は窓枠から手を離して数歩下がった。


そしてエンジンの音に負けないどころか圧勝するような大きな声で別れ際に叫んだ。



「気付いてないだろうけど、社長の事話してる時、美織すごい良い顔してたよ!!」








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