腕枕で眠らせて
早まった、かも。
判断、誤った、かも。
そう感じたのは、水嶋さんの車の助手席に座った瞬間だった。
男の人の車に感じる独特の雰囲気。
独特の匂い。
多分、持ち主が誰だろうとそれが男の人なら100%感じる、拭いきれない独特の何か。
きっと逆も然りなんだろう。女の人の車に漂う雰囲気。きっとある。
けど、今の私にとって懐かしいこの“男性の車独特の空気”は、たまらなく不快に胸を騒つかせる。
嫌でも甦る。前彼との思い出。
……強く求められて拒みきれなくて、車でした事もあったな。
嗚呼、最悪。最悪、最悪。思い出しちゃった。
「鈴原さん?」
押し黙って唇を引き結んでいた私に、少し心配そうな声がフワリ掛けられた。