腕枕で眠らせて
「大丈夫ですか?酔いました?窓開けましょうか?」
「…大丈夫です」
本当は今すぐ停めてここから降ろして欲しい。
でも、せっかく送ってくれてるのに、自分から車でってお願いしたのに、いくらなんでもそれは失礼すぎる。
「音楽でもかけましょうか?さっきボサノバ好きって仰ってましたもんね。CDありますよ」
水嶋さん、気を使ってくれてる。
「少し近道しますね。この道だと空いてるし、ほら、海がちょっと見えるんですよ」
優しい。
「暑くないですか?窓開けるよりエアコン入れましょうか?」
水嶋さん、優しい。
大丈夫。
ここにいるのはアイツじゃない。
ここにいるのは、優しい水嶋さん。
「ありがとう、大丈夫ですよ。気を使わせてごめんなさい」
ニコリと笑うと、隣の水嶋さんの表情がほっと緩んだのが分かった。