腕枕で眠らせて



ガクガクと手が震えてる。


「なんでそんな事言うんですか!?私、仕事のつもりで来たのに!!」


水嶋さんの見開いた目に、汚い私が映ってる。


「酷い!酷い!!水嶋さんの事、信頼してたのに!!」


優しい水嶋さん。
傷付けたくない。


「いやらしい!!軽薄!!信じられない!!」


こんな事言いたくないのに。


「もう会いません!これから仕事の連絡は全部メールでして下さい!」


言いたくないのに、止まらない。




口から、汚い言葉がどんどん、どんどん、溢れてくる。


あの日からずっと澱のように溜まっていた黒いものが、堰を切って溢れ出す。


止めて。誰か止めて。




「男の人なんか大っ嫌い!水嶋さんなんか、大っ嫌い!!」




水嶋さんが、息を飲む音が聞こえた。





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