腕枕で眠らせて
一気に捲し立てて、ハァハァと息が切れた。
「…降ります。歩いて帰ります」
ドアノブに手を掛けた瞬間
「…鈴原さん!」
水嶋さんの手が私を止めようと伸びてきた。
「っ!」
一瞬身体がすくんだけど、その手はハッと気付いたように引っ込められて触れることは無かった。
「…ここで降りるのは危険です。駅までも遠いです。…送らせて下さい、せめて駅まで」
「…」
水嶋さんの方を見ることが出来なかった。
すくんだ姿勢のまま固まったように押し黙る。
「…申し訳ありません。
仕事で呼び出しておきながらこんな事を言って、僕が卑怯でした。
本当に…申し訳ない」
私に向かって頭を下げる水嶋さんの姿が、助手席の窓に写って見えた。