腕枕で眠らせて
1時間と20分。
足音が近付く度に水嶋さんかとドキリとして、道を通り過ぎる人の視線にオドオドして、じんわりと手に汗を掻いた80分。
コツコツと落ち着いた革靴の音と、背の高いシルエットがやって来て「…えっ」と小さく声をあげた。
「…鈴原…さん…?」
「…水嶋さん…」
大通りに面した雑貨店の裏の小さな駐車場。
ぬるい春の夜。
張り詰めた空気。
水嶋さんが口を開く前に私は手に持っていた紙袋を差し出した。
「…これ…っ、あの…水嶋さんが特注された、サンキャッチャーです…」
「えっ」
「あの…どんなデザインがいいか聞かなかったから、水嶋さんのイメージで私が勝手に作りました。吊し型ですけど置き型がご希望でしたら、作り替えます」
「わざわざ持ってきて下さったんですか?」
水嶋さんの伸ばした手に紙袋を預けてコクリと頷いた。