腕枕で眠らせて





1時間と20分。


足音が近付く度に水嶋さんかとドキリとして、道を通り過ぎる人の視線にオドオドして、じんわりと手に汗を掻いた80分。



コツコツと落ち着いた革靴の音と、背の高いシルエットがやって来て「…えっ」と小さく声をあげた。



「…鈴原…さん…?」


「…水嶋さん…」



大通りに面した雑貨店の裏の小さな駐車場。


ぬるい春の夜。


張り詰めた空気。



水嶋さんが口を開く前に私は手に持っていた紙袋を差し出した。


「…これ…っ、あの…水嶋さんが特注された、サンキャッチャーです…」


「えっ」


「あの…どんなデザインがいいか聞かなかったから、水嶋さんのイメージで私が勝手に作りました。吊し型ですけど置き型がご希望でしたら、作り替えます」


「わざわざ持ってきて下さったんですか?」


水嶋さんの伸ばした手に紙袋を預けてコクリと頷いた。




< 65 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop