腕枕で眠らせて




「…全部…話してくれて、ありがとう」



ふわり。と。

春の風にも似た声で。



「辛いのに、苦しかったのに、伝えてくれてありがとう」



顔を上げなくても分かる。水嶋さんがどんな表情で言葉を紡いでるのか。


私の瞳が、さっきと違った涙で濡れ出す。



顔が上げられないままの私に、水嶋さんがゆっくりと話し出す。



「…鈴原さん。初めて会ったときから貴女が何かに怯えてるのは気付いてました。

けど次に会ったとき、それでも貴女は沢山笑ってくれて。

…おこがましいと思いながらも、貴女を時々怯えさせる何かから救いたいと僕は強く思いました」


水嶋さんの声が、少しだけ張り詰める。


あのさざ波のように穏やかな人の声が。



「なのに僕は…救うどころか、貴女を追い詰めて苦しませた」



水嶋さん。



「申し訳ありません、鈴原さん。やっぱり悪いのは僕です」




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