腕枕で眠らせて



サラリと素直な髪を揺らしながら水嶋さんがまっすぐ私に向かって頭を下げた。



「…違う、水嶋さんは悪くない…!」


ふるふると首を横に振った私を安心させるように水嶋さんは少しだけ微笑んだ。



「鈴原さん。覚えていますか?最初にお会いした日の割れた硝子の事」


「え?」


「…硝子は、ひび割れて砕けても美しいと…僕は思うんです。

砕けて尚、透明のままキラキラと光を映して。けれど。

砕けた硝子に手を伸ばせば、怪我をするのは当然です」


「…水嶋さん…」


「貴女の砕けた心に不用意に手を伸ばしたのは僕なんです」



そう言った水嶋さんは、少し困ったようにはにかんで笑った。



「鈴原さん。僕は貴女の心が透き通っていて美しい事を知っています。例え、ひび割れ砕けても、僕はそんな貴女さえ愛しいと思います」




「水嶋、さ…」




「全てを話してくれてありがとう、鈴原さん。

僕はやっぱり、貴女のことが好きです」





< 71 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop