腕枕で眠らせて
着いた駅は喧騒と明るさで賑わっていて、私はその中に歩みを進めてから水嶋さんを振り返った。
「送って頂いてありがとうございました。新商品の納品についてまた後日メールしますね」
そう言って下げた頭を戻すと、水嶋さんは口元に手を当てて何か言いたそうにしていた。
「鈴原さん。実は僕、来週から一ヶ月ほど海外に出張に行ってくるんです」
駅の喧騒に掻き消されないように、水嶋さんが少しだけ私に近付いて言った。
「えっ、そうなんですか?」
「はい。人気のある商品の幅を広げようと思って新しい取引先を作るのと…少し勉強も兼ねて」
「どちらへ行くんですか?」
「ハンガリーとオーストリアです」
それを聞いた私の顔がパッと綻んで、それを見た水嶋さんの顔もふっと嬉しそうに緩む。
「オーストリアと言えばスワロフスキーですね!」
「ふふ、やっぱり鈴原さんならそう言いますよね」
きっと水嶋さんの予想通りの反応をしたんだろう、目をキラキラさせる私に水嶋さんが嬉しそうにクツクツ笑う。
「鈴原さんのサンキャッチャーのおかげで硝子商品全般の人気が高まって来てるんです。これを機にもっと売り場を広げようと思って」
ええ。そんな。私のサンキャッチャーのおかげなんて。言い過ぎですよ水嶋さん。
「お土産、たくさん買ってきます。楽しみにしてて下さい」