腕枕で眠らせて
「すみませんね、一ヶ月も留守にしてしまって。何か不都合とかありませんでしたか?」
「いいえ、発注は水嶋さんが発つ前にしてくれましたし。納品の連絡もちゃんと玉城さんがしてくれましたから」
「そうですか、なら良かった」
そう言うと、水嶋さんは経営者の顔を崩して更に柔らかい笑顔になった。
「じゃあ来月の発注は後でメールするとして……はい、これ鈴原さんに」
「え?」
「お土産です」
白いカフェのテーブルに置かれた青い箱。
そのコントラストだけで胸がワクワクざわつく。
「開けていいですか?」
「もちろん」
ああ、きっとそうだと思っていたけど。
開いた箱には世界最高峰の輝きを誇るクリスタルのオブジェ。
「……素敵…」
一片の濁りもない硝子で作られた薔薇の花束。
繊細なカットの花弁が薄い赤を優雅に光と踊らせる。
思わず時間を忘れるほどうっとりと魅入ってしまった。