腕枕で眠らせて
ふ、と気付いた時には向かいの水嶋さんが目を細めて私の方を眺めていた。
「あっ、すみません、なんか凄く綺麗で惹き込まれちゃった」
「喜んで頂けて良かった」
そう言って嬉しそうに頷いた水嶋さんは、今度は茶色い紙袋を差し出してきた。
「わっ、これもしかして」
「本場のザッハートルテです。これも、どうぞ」
「うわぁ嬉しい。ありがとう、水嶋さん」
綺麗な硝子の花束も最高だけど、女子としてはこれもかなり嬉しい。
「本当にありがとうございます。スワロフスキーもザッハートルテも凄く嬉しい」
頬を紅潮させるほど喜んだ私を見て、水嶋さんは照れたように笑いながらコーヒーを一口飲んだ。
「写真もいっぱいありがとうございます。インスブルックのクリスタルギャラリーとか私行ったことないから、水嶋さんの撮った写真で見ることが出来て嬉しかった」
「クリスタルギャラリー想像以上に綺麗でした。硝子にこんな使い方があるんだって凄く感心したり」
「街にもスワロフスキーのお店が多いんでしょう?」
「ええ。インスブルックのひとつの売りですね。面白い街ですよ。ゴシックなのに妙に可愛らしい建物があったりして」
「あ、それ写真で送ってくれたあのホテルですか?」
「ははは、正解です」