血染めの鎖

「…さて。おいアル、もう出てきてもいいぞ」


闇のなかへ声をかけるリーク。

いつもならここで『ったく、人使い荒いんだよテメェは!』と言ってトルガが出てくるはず、なのだが。


「? おい、アル…」


返事どころか、姿すら見せない。

おかしいな。

首をかしげたリークは、もう一度「アル」と呼びかけながら闇のなかへ入り込んだ。


しばらくすると、崖先に突っ立っているひとつの影がぼんやりと見える。

なんだ、まだそこにいたのか。

呆れたように息をついたリークは、もう一度声をかけた。


「アル、返事をし…」

「違うヨ、おにーさン。俺は君の探してる奴隷ちゃんじゃなイ」

「?!」


なんと、そこにいたのはトルガではなかった。
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