血染めの鎖
トルガより背の高い青年が、こちらを見てニヤリと笑っていたのだ。
いや、補足をするならば。
「っ…貴様、魔族の者か…!」
「あはは、やだなア。そーんな怖い顔しなーいデ♪」
人とは違うソレは、本来人間の腕にあたるものなのだろう。
しかしソレは、人の腕の形をしていなかった。
まるで獣のように太く大きく、皮膚を覆うように毛がもっさりと生え、鋭い爪がぎらりと黒光りしているのだ。
これはもう、異形としか言い様がないじゃないか。
「トルガはどこだ。少しでも傷をつければ貴様、万死に値するぞ」
恐れず相手を睨むリークも大層だが、目の前の青年はその姿勢をただ笑うだけだった。
「おお怖イ。そんなに睨むと目付きが悪くなっちゃうんだヨ?」
「黙れ」
「あははっ、怖や怖や…」
煽る青年の思惑通り、リークは青筋を浮かばせて目で見てわかるほど怒りに震えているのがわかる。
さてこの青年、一体何がしたいのか。