血染めの鎖
「足枷とその鎖を外しておいてくれたからよかったものの……いつもの格好ならこうして逃げるなんざ無理な話だよ、ったく」



肩をぼきぼき鳴らすトルガ。ふと、リークは思い出したようにトルガに話かける。



「そういえば、なんでお前はあの時あいつらを殴らなかったんだ。お前なら出来ただろう?」



あの時、

それはリークが『好きにしろ』と言ったあの時だろう。


なんの事だとトルガはきょとんとしたが、それも一瞬。

すぐに「ああ、」と言ってリークを見据え、口を開いた。



「だってよ、あんとき俺があいつら殴ってたら、お前の評判まで悪くなっかもしんねえじゃんか。

『なんで王子はあんな奴を?』『奴隷を贔屓しているのか?』『あの王子は見る目がない』……ってな」


「トルガ、お前……

自分で言ってて悲しくないか?」


「むっちゃムカつくわボケ」



二人の間に真面目ムードなど、滅多なことでは起こらない。

トルガも青筋を若干浮きたたせているのがその証拠だ。

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