血染めの鎖
なんかすげえ。
思わず呆けそうになる光景だが、トルガとリークは村長のみに視線を真っ直ぐ向けている。
もっとも、リークは王子。トルガは王家専属奴隷。この光景にも慣れているからだろう。
「おお、おお……! 神はわたし達を見捨てなかった…っ。
そなた達が、この村を救ってくれるというのですね…!」
「え、いや、なんか勝手に連行され…………イッ?!」
「(トルガ、お前は黙っていろ)
……失礼しました。僕の奴隷の言ったことはお気になさらず。
ああ、ところで。この村はとある危機に瀕している、と…。僕たちでよければ、是非とも救済に協力いたします」
「そうか、そうか…っ。ああ、よかった。これでようやく、解放される…!」
目頭を抑える村長と、歓喜の声をあげる村人たち。
優しい言葉を紡ぐリーク。にっこり笑うリークはまるで神だと人々が崇める中。
「(くそイッテェ…っ)」脇腹を押さえて悶絶するトルガには、リークが悪魔にしか見えなかったという。