血染めの鎖

⇒谷深き慈悲




夜。村には静けさが辺りを包んでいた。

明かりもほぼない村に、ぽつりぽつりと浮かぶ松明の灯は温かさを感じさせる。

が、



[ニンゲンっ、ニンゲンんんっ]

[オレも喰らうサネ]


[ムふっ、むフふフフっ。今日ハ例のムスメでも喰ラうカネ?]



その灯を宿す主らが魔族とあっては温かさも泡と消えよう。

いや、それすら自身の熱も奪っていきそうだ。くわばら、くわばら。


夜は魔族も活発となる時間帯。どうりで村人がみえないわけだ。

もっとも、“それを知らぬ、いや、覚えていなかった不届き者には無意味なハナシ”か。



「ふ ぁあ、ねみぃー。つーかリークの野郎マジありえねえんだけど。俺がグロ禁になったらどうするよ、ええ?」



夜の散歩、というわけでもなく。ただ単にリークから申し付けられた“材料”を集めに夜間徘徊をしているトルガ。


ああ、彼女が死ぬのも時間の問題か。

< 69 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop