血染めの鎖
村長の家から出て、すぐ近くの岩の上で休憩しているトルガ。
あぐらを掻いて欠伸をし、ボリボリと後頭部を掻くトルガはまるでオッサンだ。
ジャラジャラと音をたてる鎖は、その存在を主張するかのように
[ニん、げん、カ?]
ああもう、ほら、魔族がすぐ傍に。
「やっべっ」思わず声をもらすトルガは、慌てて岩から飛び降りその影に隠れた。
そろぉ~っ…と、岩の影から様子を覗けば、いるいる。朽ちたザクロのような形態をした魔族共が。
真っ赤な舌をだらしなく出し、その先からはねばつく唾液がボタボタと地面を汚している。
目は瞑れているのか、黒々しく穴があいたかのようだ。
赤黒い体からは、強烈な異臭がする。
強烈な異臭。
つまり五感の冴えるトルガにとってそれはもはや地獄にちかい。いや、地獄そのものである。
「(うっぷ……、気持ち悪ぃ。こりゃあ一旦戻ってもう一度出直すしかねえな。
クソッ、にしても何なんだよこの異臭!俺を殺す気か……)
っ、う、おえぇ……」
とうとう堪らずトルガは吐き出してしまう。びちゃびちゃと重力に従い地面へと落ちていく胃内物。
まだ飯食ってなくてよかった。ぜってぇ食っても吐くだけだし。
そう、トルガが思ったその時である。