血染めの鎖
「は?おまえ、」誰だよ。そう尋ねようと口を開いたトルガ。
それを制するように人差し指をトルガの口に当てる青年。
「?!」いつの間にこんな近くに。目を見開くトルガだが、青年の口から紡がれた言葉には、息をすることも忘れさせられた。
「ほんとの敵は誰だろうネ。君はわかるよネ、だって君はふつーの人とは違ウ。
俺らとおなじ、“化け物”なんだからサ」
「!」
奴隷は静かに、灯を落とした。
その、暗く深い谷底へ。
明くる日の早朝。消えた旅人の噂が村中に広まり、皆口々にこう言った。
神隠しにあったのだ、と。