血染めの鎖
突然の攻撃に顔を歪める少年だったけれども、決して少女を切り離そうとしなかった。
ただずっと少女がぎちぎちとかぶりついてくるのを見守って。
そうする内に、とうとう地面には水たまりではなく血溜まりができてしまう。
幸いか、雨のせいで流れる血は雨水と共に近くのマンホール下へと流れていく。きっと下水道は赤く染まっていることだろう。
ふーっ、ふーっ。鼻息荒くかぶりつく少女の目には恐怖と憎悪の念が込められていた。
今ここに主人は見えないとはいえ、この子が奴隷であることは確か。
捨てられたのか、はたまた冷たい雨の中で遊ばれているのか。どちらにせよ苦の道を歩かされている少女が実に哀れであった。
まだ小さな奴隷にとって、これほどの現実は許容範囲に収まりきらないこと。
『自分は奴隷だから』と割りきって、ただ従順につき従うことができぬのだ。
だからこその、恐怖、そして憎悪の念。