血染めの鎖

次第しだいに、奴隷である少女は疑問を抱く。


なぜ目の前の少年は自分を蹴らない?

なぜ自分のことを振り払わない?

なぜ自分を忌々しそうな目で見ない?


なぜ、拒絶しようとしないのだ?


明らかに動揺し噛む力も弱まった少女に気づいた少年は、何も言わずゆっくりと右手を動かした。

その動作にビクッと体を震わせる少女。

ああ、やはり殴るのかと思ったけれど。


「ぼくよりちいさいな」

「っ、あ……?」


そっと頭を撫でてくるその右手に、とうとう少女は驚いて口を離した。


今、自分は撫でられている?

今、自分は受け入れられている?

今、自分は慰められている?


ぐすん、

「あったかい」

少女の頬に、一筋の涙がつたった。
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