そして 君は 恋に落ちた。
「なぁ…」
「……っな、にっ!」
駅から我が家までの道、小林君があまりにフラフラしてるから、彼の左腕を私の首にかけ、寄り添うようにして歩いていた。
すでに周りの店は閉店時間になり、街灯は少ない。
歩いてる人もほぼなく、支えてるのがやっとの私の足は今にももつれてしまいそう。
……やっぱりタクシー待てば良かったかな。
「お前、さ。瀬川のこと……」
いやいや。あの行列を見る限り、家に帰れるのはかなり後だ。
それならこのまま帰った方が―――
「好きなの…?」
すぐ横にある彼の口から囁かれた言葉。
不意に聞こえた言葉に、「は?」と聞き返すため左に顔を向けた。
私より高い位置にある彼の顔が、後ろからの街灯の光に影ができ、その表情が分からない。
あ、と思ったときには、すでに遅かった。
彼の睫毛が私の頬に触れ、頬を撫でる。
―――っ
私の口に触れるのは、彼の唇。
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