そして 君は 恋に落ちた。

「……え」


眼鏡を掛けようとした手を何故か掴まれた。
突然の事に顔を上げるとすぐ目の前に鈴木君の顔。


「…っ な、何っ!」


驚きのあまり体を引く。が、彼はそんな私の手首を掴んだまま

「春日さんは眼鏡ない方がいいと思います」

淡々と言う彼に、ドキッとしてしまった。


……いかんいかん。


「……とりあえず放して。眼鏡掛けないと見えないの」

「あっ 失礼しました!」

彼も無意識だったのか、顔を真っ赤にして慌てて手を離す。




「……何してるの?」



聞き覚えのない声。

その低い声に誰の声か分からずいると、鈴木君が私の後ろを見て呼んだ。


「松田先輩…!」



その名を聞き、思考が止まる。




振り向けない私に気づかない彼は、飼い主に呼ばれた子犬のように松田君の元へ急いだ。

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