そして 君は 恋に落ちた。


「先輩も探し物ですか?」


「いや、春日さんに用があって」


「そうだったんですね。実は探してたファイルが見つからなくて春日さんに教えてもらってたんです」


「そう」


「先輩は…」


見なくても分かる。
鈴木君のお尻には、ブンブン動く尻尾があるはずだ。きっと。


今のうちに立ち去ろうと振り向く。


と、同時に

「悪いけど。
 大切な話だから先に戻ってくれるかな?」


少し大きな声。でも、顔は笑顔で。

そんないつもと違う彼に、空気を読んだ鈴木君は「は、はい…っ」と急ぎ足で倉庫から出て行った。


……右手と右足同時に出てたけど大丈夫か…?


そんな私の心配は、


「何してたんですか?」


この声を聞いた瞬間、余計なことだと気づく。



……大丈夫じゃないのは私だよ。

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