そして 君は 恋に落ちた。
「何してたんですか?」
私と彼の間にいた鈴木君はもういない。
一歩、近付く彼から逃げるように震える足を下げる。
「なにも、」
「あんなに顔近づけて?」
私の答えなんて求めてないように即座に返ってきた声。
無表情でジリジリ近付く彼が、ふいに微笑んだ。
その笑顔に、さらに緊張が走る。
「……捕まえた」
言葉の意味が分からなかったけど。
下がろうとした私は気付く。
背中一面に触れる壁の存在に……
「先輩。どうします?」
さっきまでの声と違う愉しそうな声に、指先が震えた。
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