そして 君は 恋に落ちた。

「あ、何だよ。ここにいたのかよ」


ヒョイと顔を覗かせる彼に近付く松田君。


「さっきの、あれで大丈夫でしたよ」

「マジで!サンキュー」


何事もなかったように振る舞う彼を見て、私は詰まりそうな喉から息を深く吸い込む。


「……甘やかしちゃだめよ。瀬川君も小林君も経費使い過ぎなんだから」

声……震えてないよね…?


「接待とか大変なんだよ」と反論する瀬川君の前で、私を見て真顔になった松田君。

その表情に、また喉が詰まる。

けど、すぐ笑顔を張り付けた彼。


「そろそろお昼ですね。先に戻ります」

「お前最近食堂来ないだろ?どこ行ってんの?」


その質問に笑顔で「外で食べてます」と答えると、出口に向かった。



「んだよー!誰と食ってんの?
 女かぁー?!」


その質問には、もう答えなかった。


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