そして 君は 恋に落ちた。

「おはようございます」


受付からはいつもと同じ、丁寧な挨拶。

それに目を向けず「おはよう」と返す小林君。
私は受付側に小林君が居るのを良いことにその体を壁にして視線を遮る。


「おはようございます」

少し離れた場所からの挨拶の声。

話しかける小林君の声が、だんだん遠ざかってゆく。



「……って、お前聞いてねーだろ」


一瞬にして声が近くなったのは、彼が私のおでこを小突いたから。



「聞いてるよっ」

「嘘つけ」

エレベーター前には、いつもとは違う、人、人、人で。
満員に近い状態のエレベーターに私も小林君も乗り込むと、ドアが閉まるのと同時にいま一番会いたくない彼の背中が。



「あれ?小林昨日と同じ格好?」


小林君と同じ営業の人が目ざとく見つけた。
しかも、エレベーター内全部に聞こえる声で聞いて来やがった。

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