そして 君は 恋に落ちた。


……魔王さま。お願いですから気まぐれは勘弁して下さい。



私の願い虚しく、

「ああ、昨日春日さんちに泊まったから」


さらりと笑顔で返す彼。と、しん…と静まり返るエレベーター内に、私は息を止めた。



ポーン…


エレベーターは到着音をあげ4階に止まる。

無言のままゾロゾロ下りる人の流れの中、小林君は貼り付けた優しい笑顔で「じゃあ」とエレベーターを下りてゆく。



後に残るのは、5階へ行く私と、同僚。……プラス松田君。




………あの男……許せん。






「春日って営業トップ二人とすげー仲良いよな」



午後になり少し手が空いたので紅茶を飲もうと立ち上がった私に、二つ上の先輩が私に声をかけてきた。

私はその人のマグカップを受け取りながら「気のせいです」と流すけど。その先輩は、「本命はどっちなの?」と小声にならない声で更に聞いてきた。


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