そして 君は 恋に落ちた。

瞬間、部署全体の話し声がやんだ。



「どちらもタイプじゃないです」


「えー?でも泊まらせたりする仲なんでしょ?」



……この男うぜーっ!


先輩とはいえ、仕事中に大して仲良くない同僚の色恋沙汰に口出しする?普通。


いい加減イラついた私は一言言ってやろうとした瞬間―――


「ハセさん、課長が呼んでます。もしかしたら無駄話のこと怒ってるのかも……

 さっきから睨んでましたよ」


初めは心配そうに。

でも、「睨んでましたよ」で今日一番の笑顔になった松田君。

それを見た先輩は顔をひきつらせた。



「早く行った方が良いですよ」


首を傾げて可愛く言うのに、何故だろう……

後ろの空気がどす黒く見えるのは。



課長の席に向かう先輩の後ろ姿が小さく見えたのは、気のせいじゃないはず。

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