そして 君は 恋に落ちた。


帰宅ラッシュの始まった電車に乗ると、色々な匂いの混ざった車内に少し顔をしかめる。
それでもしばらく揺られていると、いつも降りる駅に着いた。


暖房と人の熱気に少し暑かった車内から外に出て少し息を深く吸う。
それからまた人の波に乗りながら改札を出ると、鞄が振動を伝えた。



……気付きたくなかったな。


ノロノロ鞄を探ると、想像通り、携帯が着信を知らせてる。



ピッ


「……はい」


『なに先帰ってんの?
 予定のない春日さん』


イヤミいっぱいの相手は小林君。

本当、何故か彼とは最近よく絡むな、と頭の隅で思った。



『いまどこ?』


「……言いたくない、かな」


『お前んとこの駅か』


「………」


『了解。少し待ってろ』


「えっ いや、本当に今日は」


言ってる最中に、通話は切れた。

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