そして 君は 恋に落ちた。

「入りたくない!」


「は? 何で?」


いつもと違う彼の冷たい声。

ゾクリとしながらも、体全体で拒否する。



「お願いだから…」


「何で嫌なの? 理由は?」



いつもの柔らかい彼の空気は全く感じられなくて。
何も言わない私に苛つきを隠さない彼。


その姿に泣きそうになるのを堪える。



「言いたく……ない」



俯き小さく答えれば、頭上から聞こえたのは大きな溜息。



「なら言わなくていい」


言ったと同時に、かなり強引に腕を引かれ自動ドアの中に入ってしまった。


「松田君!」


「あなたは何も答えなくていい。

 後でゆっくりその体に聞くから」


言われて目を見開く。

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