そして 君は 恋に落ちた。
「僕にとっては美和ちゃんは雌だよ」
銀縁眼鏡の奥の瞳を細めて笑う吉永さんに、私は笑顔で「ありがとうございます」と伝えた。
隣の瀬川君に「社交辞令を本気にすんな」と言われたけど、それはスルー。
「よし、そろそろ帰るべ」
言われて時計を見たら、すでに23時過ぎていた。
終電間近で慌てて身支度をする。
「また来てね」
吉永さんに、見送られながら、私達はお店を後にした。
瀬川君と二人で他愛もない話をしながら駅まで向かう。
「女の第一印象は見た目」
「小綺麗にしてないとブスはいつまでもブス」
「30間近になって色気もない女は女じゃない」
……等々。
主に私に対する悪口を聞かされた。
「身綺麗さと色気か…」
言われながら、ほんの少し、自分のクローゼットの中を思い出した。
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