そして 君は 恋に落ちた。



「だ、から……彼女、なんでしょう?

 松田君の……」



最後は小さくなってしまったけど。

一応聞こえていたらしい彼は、私の言葉に目を見開き一瞬、時間を止めた。



「……彼女が、俺の、彼女って?」


彼女を見て、また私に視線を戻す。

そうやって、再度発音良く聞き返した彼に、恐怖で何度も頷いた。


目が据わってる―――っ!





助けを求めるように彼女を見ると、目と目が合った。

そして、困ったように笑う。



「―――もういい」


バンッとエレベーターの中に無理矢理私を押し入れると、彼は“閉”ボタンを押した。

半ば投げ入れられた私は慌てて出ようとしたけど一歩遅く、閉まったドアのガラス越しに彼女は苦笑いで手を振っていた―――…。








< 173 / 378 >

この作品をシェア

pagetop