そして 君は 恋に落ちた。
「だ、から……彼女、なんでしょう?
松田君の……」
最後は小さくなってしまったけど。
一応聞こえていたらしい彼は、私の言葉に目を見開き一瞬、時間を止めた。
「……彼女が、俺の、彼女って?」
彼女を見て、また私に視線を戻す。
そうやって、再度発音良く聞き返した彼に、恐怖で何度も頷いた。
目が据わってる―――っ!
助けを求めるように彼女を見ると、目と目が合った。
そして、困ったように笑う。
「―――もういい」
バンッとエレベーターの中に無理矢理私を押し入れると、彼は“閉”ボタンを押した。
半ば投げ入れられた私は慌てて出ようとしたけど一歩遅く、閉まったドアのガラス越しに彼女は苦笑いで手を振っていた―――…。