そして 君は 恋に落ちた。






「……抱いて…」




瞳を潤ませ赤く色づいた唇から出た言葉。

それを見て俺は何度も自分に問いかける。



―――いま、何て言った?








クラクラする頭に、今までの流れが走馬灯のように駆け巡った。


先輩と帰りが一緒なのも、二人で飲みに行くのも初めての俺は、緊張してしまって。
それでも、先輩の様子がいつもと違うこともあり、それほど浮かれることなくたわいない話をして酒を楽しんでいた。

ただ、ペースが早かった先輩は案の定すぐに具合悪くなり、俺は会計を済ませ外に連れ出し空気に当てながら酔いを醒まさせていた、んだけど――…



「松田君……お願い。

 一度だけでいい……私を……」



さっきよりも瞳を潤ませ見上げる先輩に、言葉を失う。




……これは何の罠だ?



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