そして 君は 恋に落ちた。



「ホ、テルがいい…」


「え?」



震える声で不意に答えられたら、素で聞き返す。




「お互いの家は知らない方がいい」


言われて、逆上せていた頭が一瞬で冷えた。




ああ…、彼女は本当に一夜限りにするつもりなんだ。



「分かりました」


言って掴んだ手は、思いの外小さく暖かい物だった。













俺の後ろから、履き慣れない不格好なヒールの音が聞こえる。


その音に酷く緊張しながら、掴んだ手に少しだけ力を込めた。


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