そして 君は 恋に落ちた。


急ぎ足で立ち去る先輩を追いかけられなくて。

あの人が本気で一夜限りの思い出にしようとしてるなら、そうした方がいいと思う。


だって。俺は年下で、部下で。

彼女の気持ちを受け取れないのに、止める必要はないだろう…?



―――それでも。


先輩の口から、聞きたい。

どうして俺に抱かれたのかを。


それを聞いたら、何かが変わる気がして……










そして時間は淡々と過ぎ、終業時間。


部署内に「お疲れ様でした」の声が複数聞こえ始めてすぐ、先輩は慌てたように鞄に全てを詰め込むと、

「お疲れ様でした。お先に失礼します」


一際大きな声で部署を後にした。


その普段と違う行動に驚きつつ、訳も分からずその後ろ姿を追ってしまった。


……どうしたいんだ、俺は。


< 217 / 378 >

この作品をシェア

pagetop