そして 君は 恋に落ちた。
「あ、えっと…」
………どうしよう。
頭真っ白だ。
私の沈黙に何か勘違いしたらしい彼は、「待ってますから、ゆっくり片づけて下さい」と笑った。
拍子抜けした私は小さく返事をしてデスクの上を片づけると、彼が待つエレベーターへと向かう。
松田君はエレベーター前の壁により掛かりながら、私を待っててくれた。
エレベーターは5階で止まってる。
「お待たせ」
「はい。行きましょうか」
エレベーターのボタンを押すと、私を先に乗せる。
……ジェントルマンだ。
エレベーターのドアが閉まり、ゆっくり下がっていく。
私は一歩前にある後ろ姿をじっと見ていた。
すると、私の視線に気づいてるのか、彼は前を向いたまま、
「春日さんが残業って珍しいですね」
と話しかけてきた。
咄嗟にそらす瞳。
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