そして 君は 恋に落ちた。

「あ、えっと…」



………どうしよう。

頭真っ白だ。




私の沈黙に何か勘違いしたらしい彼は、「待ってますから、ゆっくり片づけて下さい」と笑った。


拍子抜けした私は小さく返事をしてデスクの上を片づけると、彼が待つエレベーターへと向かう。

松田君はエレベーター前の壁により掛かりながら、私を待っててくれた。


エレベーターは5階で止まってる。



「お待たせ」

「はい。行きましょうか」


エレベーターのボタンを押すと、私を先に乗せる。


……ジェントルマンだ。



エレベーターのドアが閉まり、ゆっくり下がっていく。
私は一歩前にある後ろ姿をじっと見ていた。


すると、私の視線に気づいてるのか、彼は前を向いたまま、

「春日さんが残業って珍しいですね」

と話しかけてきた。



咄嗟にそらす瞳。

< 22 / 378 >

この作品をシェア

pagetop