そして 君は 恋に落ちた。
「やっぱりダメなのかな……。
私のことなんて全く眼中ないもんね」
ふふっと笑うけど。声は震えていた。
「あっちに行こう」
細い道路の向かいに軽く座れるバス停がある。
そこへ彼女の手を引き向かう最中―――
「………ック…」
彼女の足が止まった。
「藤井さん」
「ごめ…っ も、諦めなきゃダメって分かってるのに…っ
無理だって……分かっ……の、に…」
いつも何を言われてもニコニコしていた彼女が、周りを気にせず泣いている姿に、俺は慰めの言葉が出てこない。
道の真ん中、行き交う人の中で二人佇んでいると、店から俺達以外また一人、出て来た。
「藤井さん……大丈夫だよ」
優しく声をかけ、ゆっくり抱き寄せた。
「アイツは素直になれないだけ。
だって―――」
言い終わらない内に勢い良く腕を捕まれ、引っ張られた。
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