そして 君は 恋に落ちた。
「きゃ…っ」
「おい!」
腕の中の彼女の肩が捕まれる。
思ったより乱暴なそのやり方に俺も声を荒げた。―――が。
「コイツはダメだ…!」
俺のよく知るヤツは、叫びながら藤井さんをその腕の中に入れ、俺の腕を振り払った。
その必死な姿に睨みつけるも、言葉が出ない。
「え… な、んで…」
見上げた先のヤツの顔に、藤井さんの涙は止まった。
………手かかりすぎ。
「先に帰るぞ」
人様のラブシーンを見るほど暇じゃないし。
俺の言葉に藤井さんは慌てるけど、当の本人は“早く行け”とばかりに睨みつけたまま無言を貫く。
その姿に小さく舌打ちしそうになる――けど、
……うまくいったなら、それでいいか。
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