そして 君は 恋に落ちた。







帰りの電車に揺られながら、通り過ぎる光を眺めていた。

流れる光の中、ガラス越しに気怠そうな自分の顔が映る。


………疲れすぎだろ、この顔。


うわー、とガラスを鏡に見立て自分の顔を覗き込むと、後にいたOL二人が小さく笑った。

明らかにおかしな行動の俺を見ていた。


小さく咳払いをしながら、何もなかったように遠くを見る仕草をする。

……あんまり飲めなかったな。家にビールあったっけ…


ぼんやりしていると、頭上から最寄り駅に着くとアナウンスが流れた。




考えないようにしても。

そうしている時点で、考えてるのと一緒で。



ただ、ただ、

脳裏にあるのはあの人のことだけ。












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