そして 君は 恋に落ちた。



「ビックリしたぁー!
 脅かすなよ!」

「お疲れさん。藤井さんももう上がりなんだ?」


怒る林原を無視し藤井さんにだけ笑顔で言うと、

「ふふっ 今日は早めに上がれたの。それより、松田君も今日は早いね?」


彼女も負けじと彼氏になりたての林原を華麗に無視した。

途端にムッとする林原。



「今日は初デートのはずだったけど、急な接待入ったんだよ」

ブスッたれて言う林原に、藤井さんは苦笑い。



「なんだ。せっかく早く上がれたのにね、かわいそーに」

「うん…。でも、仕事だから仕方ないよね。

 だ、か、ら! 早く戻りなってば!」


ほら、と林原の背中を押しエレベーターに乗せる藤井さんに、林原は「分かった分かった」とデカい溜息付きで言う通りにする。

それを横目で見ながら、あ、と気付いた。



「それなら、藤井さん今日借りるわ」


エレベーターのドアが閉まる中、俺が彼女の手首を掴み上に挙げた。

それを見た林原は一瞬で顔を歪め、「ふざけんな!」と叫ぶ。………が、エレベーターは無情にもドアを閉め、ヤツを4階まで運んでいった。



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