そして 君は 恋に落ちた。







先輩の誕生日。


11月11日は、特別な日になる。



……俺にとっても。







「……松田くん…?」



呼ばれて、ハッと気付く。

隣の藤井さんは眉を下げ困ったように笑っていた。


「ごめん…っ」

「私は大丈夫。それより、松田君が大丈夫?
 無理して今日じゃなくても…」

「いや、平気。むしろ買い物付き合わせてるのに悪い…」


口から出たでかい溜息に、目の前の店員も藤井さんも苦笑いで俺を見る。



「これだと、文字入れに時間かかるみたいなの」


ショーケースの上に乗せられた指輪は、プラチナ台にピンクダイアが光るシンプルなデザイン。
それを指差し藤井さんが教えてくれた。


ここは藤井さんの知り合いがやってるアクセサリーショップで、指輪はそこの一点物だ。


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