そして 君は 恋に落ちた。

松田君に「僕の家に行きますか?それとも、先輩の家がいいですか?」と聞かれた。


―――瞬間。


一気に酔いが醒めた。






「ホ、テルがいい…」


言った私に、「え?」と聞き返す彼の顔は、いつもの彼の表情。



その姿にホッとしながら、

「お互いの家は知らない方がいい」

と、もっともらしい理由を告げた。


それを聞いた彼は、少し考えるように目を伏せた。……が、次の瞬間には「分かりました」と私の手を引いて歩き始めた。





―――手…っ

………………手がっ!




男性と手を繋いだのは小学生の林間学校以来。


ものすごい早さで手が湿っていく。

引き剥がしたいけど、思いの外強く握られた手に、ふりほどくなんて出来なくて。


私は顔に熱が生まれるのを知られないように、ひたすら俯いていた。

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