そして 君は 恋に落ちた。



「さっき言ってたのは何ですか?」


怒りを抑えたような声で、私を責めるように言った彼。

何故責められなきゃいけないのか分からず彼をキッと睨み付けた、けど。彼の鋭い瞳にひるんだ私は、すぐ顔を背けた。



「答えて下さい」


背けた私の耳元で言われ、ビクリと体が反応してしまう。それに気付かれたくなくて、今度こそ、彼を睨み付けた。

彼は動じることなく私を見下ろしたまま。



「さっき言ってたのは?」

「さっきって…」


「“誰”が、“誰”の、彼女なんですか?」



ゆっくり言葉に力を込めて再度私に尋ねた彼に、私は震える唇を一瞬開き……また閉じた。



「答えて下さい」


彼の声がさっきよりも大きくなった。


怒っているのだと、再確認する。

……でも、何故怒ってるのかは分からない。


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