そして 君は 恋に落ちた。
涙は滝のように流れ、止めることが出来ない。
勢い良く私の涙は床に水たまりを作っていった。
何で……?
そんなの、君が好きだからだよ。
「……そんなに嫌…?」
不意に聞かれ、私は、小さく頷いた。
俯く私の頭上で彼の「ハハ、」と小さな笑い声がして、同時に、私の肩に額を乗せた。
瞬間―――
彼の首もとから彼の匂いがして、さらに涙が溢れる。
もう、この香りに包まれることはないんだ。
ここは、彼女と松田君の家で……私は、二人の中を邪魔するだけの女。
「帰るから……放して……」
掠れる声で、やっと言葉にした。
彼は動かず、私は涙で歪む視界を塞ぐように目を閉じる。
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